「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「子供のための大和伝説」から
「銚子の淵のガタロ」

吉野郡下市町、滝上寺(りゅうじょうじ)の裏の銚子の淵に、むかし、一ぴきのガタロ(カッパのこと)が住んでいました。
川へ遊びにきた子供の手足を持って、引きずりこんだり、吸いついたりして、いたずらをしますので、この付近では、子供を銚子の淵へ近よらないように、いい聞かせていました。
ある晩、滝上寺二十二世の恵真(えしん)和尚が便所へはいっていた時、とつぜん、氷のような冷たい手でお尻をなでたものがあります。
和尚さんが、
「こいつめ!」
といって怪物の手をにぎって、はなしませんでした。すると、
「「わたしはこの裏に住むガタロです。もういたずらをしませんから、かんべんしてください。その代わり、よくきく傷薬を教えます
といったので、はなしてやりました。
明治のはじめころ、滝上寺で売っていた傷薬はこれだといい伝えています。



いま一つ、ガタロが恩返しをした話があります。
やはり下市町阿知賀の瀬の上に和田という家があります。
むかし、この家の先祖が、椿の渡しで一匹のガタロがけがをして、くるしんでいるのを助けてやりました。それからのち、毎晩、夜が明けると、ざる一ぱいのおかねが家のあがりくちに置いてあります。それで、この家は村一番の金持ちになりました。
何年かたって、家の主人が、ある朝のこと
「こう毎日持ってくるとは、うるさいなア」
といいました。すると翌日からぴったり持ってこなくなったということです。

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