「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「紀州の龍神の民話」
稲荷の化身
昔の人の言うのみね、普通の野キツネは人をよう騙さんちゅうの。昔、たいてい店屋するものは、伏見とか玉置さんとかっていう所から稲荷さんを受けて来るんやの。そいたら、昔、チギちゅうのあっつろ。それで計る時には、この稲荷さん、分銅へかいつくちゅうんやの。また、米やなんかはかる時にゃ、枡の底へ隠れるんやちゅうの。その狐はそんなに大きなもんじゃないお。ネズミぐらいの大きさじゃちゅう。この狐、位にによって大きさが違うんやちゅうんやがね。これは丁度、阿波の犬紙、伊予のトンボ神に類したようなもんじゃのう。病人に狐ついたちゅうの。それはね、結局、伏見さんや何かから受けてきた稲荷さんがね、平素は祠へ閉じ込めとんやけど、これが出ての狐とつごうてやね、神通力を割に失のうて来た狐が人につくと言わな。人を騙すやつはそれじゃ。普通の野狐やったらそれだけの神通力はない。それは、わしらがもうかなり大きうなってからでも、この辺にね、「あの病人にゃ狐ついとんね。」という話ようあった。やれ「夕べどこそこで喰ううたニワトリはおいしかった。」とか、「どこそこの鯉はおいしかった。」とかね。ほいで、普通の時は重病人でおんのに、突然跳び起きて来て、とても人間の力では及ばんように高い石垣の上から跳んだりね。橘川にそういう人おったわな。そういう話は、わしら小学校卒業する自分のこっちゃ。

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