「うのん」の気象歳時記ブログ

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薬師寺近くのうのんから大和気象歳時記

「川上村の昔話」から
「姑殺しの話」
むかしむかし、あのう、お婆さんひとりでな、ようあるこっちゃけよ、お婆さんひとりと、ほいで息子ひとりと、ほいで、お嫁さんもろうたんや、そこへな
ほいたら、とってもまあ、初めは仲良かってんです。せやけどな、だんだんと、とても嫁さん、まあ現代的で、ほいで、お婆さんはむかし流やさかい、そういうことで もう派も合わんわいな。せやけど、あの 婿さんが、お婆も若いときからのことで思ってかわいそうに思うし、嫁さんとはどうしても別れらえれんしな、毎日毎日、その、帰ってくるとふたりはけんかやっとるらしいな、張り合いをと。
ほいで、どうしてもこれは具合悪い。毎日毎日、あの、会社へ行っても、帰ってきたらそれやさかい、あたま悩ましとったらしいわ。ほいである日、その婿さんは、だいぶ賢い人でな、じっと頭かかえて考えこんでな、これはもうしゃないと。で、あの、嫁とはどうしても別れとうないし、ふたりには縁があるし、そやけど、母親もなんぼ言うてもきかへんし、こらもうしゃないよって、別居するより手がないけど、別居するとしたらたいそうなことになってくるし、するよってにその嫁さんにな、
「おまえもよう聞いてくれ。おれもたいがい毎日悩んでな。おまえとも別れとうもないし、お母とも別れともないしな。どうしたもんと、まあ、心配したあげく、おれの考えついたのには、やっぱりそら、あとからわかるんやけどな、おまえはこれから先は長いけど、お婆さんがな、先は短いねやよって、まあ、大事にしたってほしいけど、どうしてもお婆さんが強情で聞かな、もうあの、お婆を、だいぶ情けないけど、ふたりで殺そうやないか」と。
でもう、どうしてもしゃあなかったら、殺すと。
21日の晩、おれは願神さんに掛けて、日参してな、ほんでにその晩に、なんたらいう池やっちゅたんや、わしゃむかし聞いて4んや、池みてな、うしろから突き飛ばして殺そうと。そいで嫁さんが、
「それやったら、私も信心そないないし、あんたといっしょに心合わす。」と言うたらしいわ。ほいだら、そうするかと。そうするかと。ほいだら、婿さんもそうしようかと。ほいで21日参ると。
「おまえも参りゃあ参ったらええし、おりゃもうどんなことがあったかて参ってやな、この願果たす。」て言うて。
ほいでいったら、嫁さんが考えたのにはな、これはちょっと、やっぱり考えてんな。あの、あんのじょう考えたらやな、お母さんを大事にせえちゅうこっちゃと思って。それから、21日たったらおばんがうちの主人に殺されんやよってん、どんなことあってもな、私はひとりのお母さん大事にせえな、自分の行く先は良心の呵責に耐えられんことがおこると考えてたもんで、その嫁さんも、それから21日の満願くつまで、それこそ一生懸命に大事にしたらしいわ。お婆さんがなんんぼごうはっても、強情はっても、ごんた言うても、嫁さんのことにさんうっても、そうどすか、そうどすかちゅうて、毎日ごちそうこしらえて食べさしてな、一生懸命お婆さんをたてたんやなあ。まあ、忠義をつくしたんやろうなあ。そしたらお婆さんも、なかほどでな、14 15日たったときなあ、こりゃほんまに、こんなええ嫁を考えてもたら、わしは振りかえってみたら、だいぶ強情をはっとたにちがいないと。もう先は知れとんやよって、こんな大事にしてくれる嫁にな、かかって死なな閼伽やね。他によその人やとういうたかて、こんあ親切にしてくれる娘(こ)はもう他にないよって、やっぱり自分は胸に手をあてて考えて、ちょっとわしは強情はりすぎるし、ごんたも言いすぎると思ってやな、これからは、嫁につかえろ、もうこんなええ嫁あらへんわ、他に、と思てな、それこそ一生懸命に嫁さんが大事にするもんやよって、あんのじょう心からとけてよ、ほいで、その嫁さんにだんだん親しいなって近寄っていったらしいな。ほいだら、両方ともあんじょう仲良うなってしもうて。
ほいで、21日の晩に、嫁さんにな、
「いよいよ満願がきたぞ。おまえも行くか。おばんも連れていくか」て言うたらやな、そのいだら嫁さんも、お母さんを連れていくのに殺すと言わへんけど、
「遊びにいくわ」ちゅうてな、言うたら、
「いや、もうどっこも行きたいない。こんなええ嫁にな、世話になって、わしゃ死んだら結構やさかい、もうどっこも生きたない」
ほいだら嫁さんが、
「こんなええお母さんちゅうことをわしもうっかりしとった。わし悪かったにちがいないに、わしさえ大事にしたらこのくらいええお母さんやのに、わしゃ罰あたる。もうこれからはお母さんを大事にしようで」
と思って、心のそこからふたりとも思って心がマッチして、ほんで、嫁さんはお婆さんを大事したって。ほいで、大事にしてもうてお婆さんは死んでいったってな。

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