「うのん」の気象歳時記ブログ

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「春日の森の昔ばなし」
「芸能のお好きな若宮の神さま」 2
前にも申したように、若宮は水の神、農業の神さまです。豊作を祈り、その収穫を人々とともに喜び合う時、歌い踊るのは今も変わりありません。したがって春日の若宮は芸能の神ともいえるのですが、そのことに関する一寸面白い儀式が、おん祭のお渡りに見られます。
お渡りの途中、芸能団に限って、参道の一の鳥居を入った右手の大きな松の木に向かって短い演舞をし、再び行列を整えてお旅所へ向かうのですが、これを、"松の下の儀式”と申します。


この松の木は昔から、"影向の松”と呼ばれていますが、影向とは神仏がこの世の中に姿を現わすことで、特に芸能の神は松の木を目印しに現れる、と人々は信じていました。
昔 天台宗の教円という坊さんが、自室で興福寺の経典を勉強しておると、庭前の松の上に黒い装束を着た貴人が現れて、万歳楽(まんざいらく)というめでたい舞を舞ったというお話が残っていますし、今でも能楽堂の舞台正面の板壁(鏡板)に立派ま松の絵が描かれているのも、皆、芸能と松との深い関係を物語るもので、その実物がこの、"影向の松”なのです。

松の下の儀式には、芸能をする人たちが、この松に影向する神さまに対して敬意を表し、そのご神徳にあやかろうとする気持が感じられます。

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