「うのん」の気象歳時記ブログ

薬師寺近くの小さな本のある喫茶店

薬師寺近くの うのん から大和気象歳時記

「春日の森の昔ばなし」から
「耳が遠いので損をした神さま」昨日の続き
「地下三尺」
タケミカズチの神さまは御蓋山の西麓、春日野に広大な神地を構えようと、その土地の地主であるエノモトの神さまに「この土地を地下三尺(約1メートル)だけ譲ってもらえないか」と頼みました。このエノモトは耳が遠くて、「地下」という言葉がよく聞こえなかったので、「三尺ぐらいお安い御用」とかんたんに承知してしまいました。ところが工事が始まると、何十ヘクタールにもわたる広い土地の周囲に、大きな囲いが建ち始めたのです。エノモトはびっくりして、「話がちがうじゃないか」と申しいれたのですが、タケミカズチは、「私は地下三尺といったはずだが、あなたにはよく聞こえなかったのだろう。その代わり境内の樹木の根は地下三尺より深くへは延ばさないし、あなたも住む所がなくては困るだろうから、私の近くに一緒に住んで下さい。」と申されて、とうとう広い土地を手に入れました。
大たい春日の森の地下1メートル程には硬い岩盤があって、木の根は横へしか延びないのです。台風などで倒れた大木の根を見ると、その状態がよくわかるのですが、タケミカズチの神さまはそのことを以前からよくご存じだったのかもしれません。
ところでこの広い土地は、東のお山を通してはるかに鹿島の方を遙拝するためのいわばお祭り広場で、今のような社殿はまだ建っていなかったのです。

×

非ログインユーザーとして返信する